直近で書いた福岡県筑後市の【川の駅船小屋 恋ぼたる 温泉館】周辺の観光情報を紹介する。
船小屋鉱泉公園
恋ぼたる温泉館から矢部川に平行するように東に進むと、車で約1分、徒歩で約4分で【船小屋鉱泉源公園】がある。
雀地獄
地獄と書いてあるので、霊界へと繋がるおどろおどろしい公園なのか?というとそうではなく、温泉地でよく見る熱湯や蒸気がグツグツと噴出している地獄のことだ。
地獄を囲むようにベンチが設けられているので、地獄が圧倒感を発揮できずシュールな印象になっている。
なぜこれが【すずめじごく】と言われているのか。
要約すると
雀地獄
むかしむかし、お船の小屋の在ったところに、グツグツと湧き出た水溜りがあった。
その上を雀の群衆が飛ぶと、雀がバタバタと墜落して死んでいく。その光景を見た里人達は「雀地獄」と呼び怖れていた。
ある時、病に苦しむ里人がこの雀地獄に身を投じたが、死ぬどころか気分が良くなり、数日後に難病が治るという不思議な事が起きた。
この話を聞きつけた人々が、これこそは天恵の霊泉だと湯治に訪れるようになり、井戸を掘ることとなった。
多くの犠牲者と難工事を経て、船小屋温泉郷が始まった。
今日も変わらず、炭酸ガスはグツグツと鳴り止まない。
鉄と共に絶えず炭酸ガスが吹き出ている。
間近でこの地獄を見れば、雀が落ちたのも納得いくだろう。
船小屋の地名は、 元禄2年(1689) 護岸工事用石船五艘の収納小屋が設けられ、 当時この小屋を 「石船小屋」と称しており、後に「船小屋」と呼ばれるようになりました。
船小屋温泉は文政7年(1824)に井戸を掘り、 薬泉のわかし湯として利用したのが始まりとされ、明治19年の成分分析では多量の炭酸が溶け込んだ日本有数の含鉄炭酸泉であることが示されました。
その後、 鉱泉を生かした船小屋の開発 事業に着手し、明治22年、矢部川と松永川が合流する西南角に最初の浴場施設 が完成しました。
明治37〜38年の日露戦争当時は、陸軍指定の転地療養所として、多くの戦傷者を迎え、昭和初期にかけては、飲食店、遊戯場、 土産物店等が道筋を埋め、県南唯一の温泉地として栄えていきました。
明治29年には、夏目漱石も来遊し、『ひやひやと雲が来るなり 温泉の二階』の句を詠んだとされ、鉱泉場の北側には、 句碑が建てられています。昭和6年に秩父宮殿下、昭和24年には昭和天皇もご宿泊になられました。
(参考資料・・・ 筑後市史)
この岩の塊はどうみても雀には見えないし、なんなのだろうかと不思議でならなかったのだが、よく見ると魚の形をしていることに今頃気づいた。
どうやら、この矢部川などに生息するこのオヤニラミ(セークリセーベ)の彫刻だろう。
船小屋鑛泉場
公園の向かいには、この雀地獄の鉱泉を飲用できる【船小屋鉱泉場】がある。
❝日本一の含鉄炭酸泉❞の看板がすごさをアピールしている。
先の看板に【明治19年の成分分析では多量の炭酸が溶け込んだ日本有数の含鉄炭酸泉であることが示されました】とあるが日本一とは書いていないので、現在において日本一かどうかは鉱泉場前のこの看板頼りだ。
地図やナビ、観光情報には「船小屋鉱泉場」として記載されているが、この鉱泉場の看板には違う「コウ」が使用されている。
この漢字、金へんに广(まだれ)と、黄の字で「コウ」と読むそうだが、入力候補に出てこない。
調べるとこの字は「鑛」の字の異形で、「鑛」の字は掘り出したままで精錬していない金属を意味する。
「鑛」もまた「鉱」の字の旧字であるそうだ。
通常の(自然物において通常のという表現は相応しくないが)よくある鉱泉であれば、「鉱」の字で違和感はない。
しかし、ここ船小屋の精錬されていない鉄を多く含んだ液体は、「鑛泉」の字がよく似合う。
中はタイル張りのしっかりとした作り。
「この水は霊泉です 神仏に御参りされてから炭酸泉を頂いて下さい」
その神仏というのはタンク向かい御仏前のことだ。こちらの賽銭箱にお気持ちをお供えし、お水を頂きますとお礼を伝える。
雀地獄の由来記に書いてあった、井戸掘りによる多くの犠牲と難工事のことがここに繋がる。
雀も落ちるほどの炭酸ガスが吹き出すところを掘ったのだ。どれだけ大変だったかは、ここの水を口にしてみれば感じ取る事が出来るだろう。
里人だけに限らず、多くの来訪者がこの霊泉の恩恵にあやかれることに感謝する。
「みんなの貴重な鉱泉です。一人一回・18リットル以内でご協力をお願いします。」
欲張らず、適量をいただこう。
薄暗くなってきたので、外に出てから飲んでみた。
うっっっっ。
とてつもない炭酸ガスが口に飛び込んでくる。
温かい時にはまろやかになる金属味が、冷泉&炭酸ガスで癖を強く感じる。含鉄泉好きの私だが、そのままで飲み込むのは困難に感じるものだった。
思わず吹き出しそうになった含鉄炭酸泉。
その後、なかなか口にするには勇気がいり手が伸びずにいたのだが、数日経ったころ鉄が目で捉えられるほどに沈殿していた。
泉質
含二酸化炭素・鉄(Ⅱ)ーナトリウム・マグネシウムー炭酸水素塩冷鉱泉
(低張性・弱酸性・冷鉱泉)
源泉名 | 船小屋鉱泉温泉 | |
湧出地 | 源泉に直結した配管部の蛇口にて採水 | |
泉温 | 20℃(気温20.8℃) | |
湧出量 | ーリットル(掘削自噴) | |
知覚的試験 | 無色透明 収斂味金気味 極微化水素臭 発泡あり | |
pH値 | 5.9(ガラス電極法) | |
ラドン | 1.7 bq/kg | |
分析年月日 | 2019年11月2日 | |
【飲用の禁忌症】 含有成分別 禁忌症 | 該当項目なし | |
【飲用の適応症】 泉質別 適応症 | 鉄欠乏症貧血 胃腸機能低下 胃十二指腸潰瘍 逆流性食道炎 耐糖能異常(糖尿病) 高尿酸血症(痛風) |
収斂味(しゅうれんみ)は、飲食物を口にした時、口の中が締め付けられるような感覚のこと。
※成分分析書では、飲用による禁忌症は該当項目なしとなっているが、船小屋温泉郷のHPによると、禁忌症が記載されている。
禁忌症
高血圧症・その他一般にむくみのあるもの・下痢のとき
船小屋温泉郷HPより
鉄は人間に必要なミネラルではあるが、過剰摂取はよくないという事はなんとなく分かる。
食品由来の鉄の過剰摂取リスクはないようだが、サプリメントや含鉄泉などから直接鉄分を摂取する際には摂取量に注意を払った方が良い。
ここは温泉ブログなので詳しくは控えるが、鉄の過剰摂取による副作用としては消化器への影響や、体内に蓄積した鉄分が健康を害すこともある様なので、適量を守って霊泉をいただこう。
その他情報
船小屋温泉郷には、船小屋鉱泉場の他に【長田鉱泉場】もある。
赤橋という橋を渡った先にあるので、せっかくならこちらも訪ねてみよう。
船小屋鉱泉場に比べ、長田鉱泉場の方が癖がないらしい。
長田鉱泉場傍の【長田鉱泉場ふれあい館】ではペットボトルの販売や長田鉱泉を使用したコーラ「コガ・コーラ」の販売も行っているようだ。
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